個人事業主が商品を仕入れた時の帳簿の仕訳、12の具体例です。
商品を仕入れた時の仕訳
商売の基本、商品を仕入れた時の仕訳です。
仕入れとは、販売目的の商品を購入すること。仕入れて、販売する。これがどんな商売でも基本です。
仕訳の具体例1
商品を仕入れて、事業用の現金3万円を支払った。
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 30,000 |
現金 30,000 |
・費用の部、仕入れが増える。
・資産の部、現金が減る。
仕入れた商品が増えて、現金が減ります。
左の借方には仕入の勘定科目、右の貸方に現金の勘定科目です。
仕入れの勘定科目
商品を仕入れた時は、費用の部の「仕入」の勘定科目を使います。
商品の仕入れの仕訳方法は、三分法と分記法の2種類あります。
ここで使ったのは三分法ですが、どっちを使っても構いません。
しかし、個人事業主の青色申告決算書では、年末の決算を三分法で記入するようになっています。
個人の青色申告では、なるべくここで使った三分法での仕訳をしましょう。
これで私は青色申告しています。
仕訳の具体例2
商品を仕入れて、事業主がポケットマネーで3万円を支払った。
プライベートな生活用の現金で、事業の仕入れを立て替えた時の仕訳です。
借方 |
貸方 |
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仕入 30,000 |
事業主借 30,000 |
・費用の部、仕入れが増える。
・資本の部、事業主借が増える。
仕入れの費用を、事業主が生活用のポケットマネーで支払った時の仕訳では、「事業主借」の勘定科目を使います。
左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に事業主貸の勘定科目です。
事業専用の現金を準備していなくても、事業主借の勘定科目を使えば、現金払いを簡単に会計処理できて便利です。
個人事業主が事業の税金を納めるのは、一個人として納税するので、事業の利益を個人的に使ってもいいですし、個人のお金を事業に使ってもいいのです。
仕訳の具体例3
商品を仕入れて、事業主の妻が生活費から1万円支払った。
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 10,000 |
事業主借 10,000 |
・費用の部、仕入れが増える。
・資本の部、事業主借が増える。
家族が事業の費用を立て替え場合の仕訳です。
個人事業主本人が支払っても、家族が立替えても、どっちでも事業主借の会計処理をすればOKです。
事業主本人のポケットマネーと同じく、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に事業主貸の勘定科目です。
事業用の銀行口座からお金を引き出し、妻へ立替えた現金を渡すときの仕訳は、こうなります。
借方 |
貸方 |
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事業主貸 10,000 |
普通預金 10,000 |
奥様に事業の費用を支払わせた場合は、必ず生活費として渡しましょうね。
主婦って家計のやりくりが大変なんですから。
仕訳の具体例4
商品を仕入れて、事業用の銀行口座から、代金3万円を振り込んだ。
銀行口座での支払いの具体例です。
借方 |
貸方 |
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仕入 30,000 |
普通預金 30,000 |
・費用の部、仕入れが増える。
・資産の部、普通預金が減る。
仕入れた商品が増えて、銀行預金が減ります。
左の借方には仕入の勘定科目、右の貸方に普通預金の勘定科目です。
振込に手数料がかかった場合は、その振込手数料も含めて、仕入れの費用にします。
詳しくは次の具体例です。
これで私は青色申告しています。
仕入れに配送料などがかかった時の仕訳
「仕入」には、銀行の手数料、配送料などを、含めて仕訳します。
仕訳の具体例5
商品を仕入れて、事業用の銀行預金から、代金5万円と手数料100円を振り込んだ。
借方 |
貸方 |
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仕入 50,100 |
普通預金 50,100 |
・費用の部、仕入れが増える。
・資産の部、普通預金が減る。
通常、銀行振込の手数料は、雑費や支払手数料の勘定科目を使いますが、仕入れにかかった振込手数料の場合は、仕入の勘定科目に含めます。
左の借方には仕入の勘定科目、右の貸方に普通預金の勘定科目です。
仕入れにかかる諸費用の勘定科目
原則として、仕入れにかかる諸費用は、すべて仕入の勘定科目に含めます。
運搬にかかる配送料、銀行の手数料、海外から仕入れた場合の関税などが、主な諸費用です。
仕入は、他の費用と違い、決算で売れ残りの在庫管理があります。
その年に売れた商品の仕入にかかった費用は、その年の経費となり、売れ残った商品の仕入にかかった費用は翌年以降の経費にします。
そのため、他の経費とは違い、なんでも仕入の勘定科目に含んだ会計処理をするのが、原則なのです。
仕訳の具体例6
商品を仕入れて、事業用の現金で、代金3万円と運搬費用2000円を支払った。
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 32,000 |
現金 32,000 |
・費用の部、仕入れが増える。
・資産の部、現金が減る。
商品の仕入れに配送料がかかった場合の仕訳です。
運送費用は、荷造運賃の勘定科目がありますが、商品の仕入の場合の運送費用は、仕入の勘定科目に含めます。
商品運搬にかかる配送費用を含めた総額を、仕入費用にします。
左の借方には仕入の勘定科目、右の貸方には現金の勘定科目です。
後払いで商品を仕入たときの仕訳
後払いの仕入れには、買掛金の勘定科目を使います。
仕訳の具体例7
商品を仕入れて、代金3万円は翌月に、事業用の現金で支払った。
・商品を受け取った時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 30,000 |
買掛金 30,000 |
・翌月に代金を支払った時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
買掛金 30,000 |
現金 30,000 |
商品を受け取った時
・費用の部、仕入れが増える。
・負債の部、買掛金が増える。
代金を支払った時
・負債の部、買掛金が減る。
・資本の部、現金が減る。
商品を後払いで支払った時の仕訳です。
いわゆるツケでの支払いです。
後払いで商品を仕入れた場合は、仕訳が2回に分かれます。
商品納品時には、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に買掛金の勘定科目です。
代金支払い時には、左の借方に買掛金の勘定科目、右の貸方に現金の勘定科目です。
1回目の仕訳は、商品が納品された時で、この時点で代金の支払いがまだでも、帳簿上は商品の仕入れを行ったことになります。
2回目の仕訳は、代金を支払った時で、この時には仕入は既に終了してるので、帳簿上は負債の清算をしたことになります。
買掛金の勘定科目
後払いで商品を仕入れた時の勘定科目は、負債の部の「買掛金」を使います。
同じ後払いでも、販売目的の商品以外の物の場合には、「未払金」の勘定科目を使います。
未払金も負債の部の勘定科目です。
「買掛金」は、販売目的の商品の仕入れの場合だけってことを、覚えておきましょう。
仕訳の具体例8
商品を仕入れて、代金3万円を翌月に、事業用の普通預金から振り込み、振込手数料が200円かかった。
・商品を受け取った時の仕訳
借方 |
貸方 |
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仕入 30,000 |
買掛金 30,000 |
・翌月に代金を支払った時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
買掛金 30,000 |
普通預金 30,200 |
商品を受け取った時
・費用の部、仕入れが増える。
・負債の部、買掛金が増える。
代金を支払った時
・負債の部、買掛金が減る。
・資本の部、現金が減る。
・費用の部、仕入れが増える。
商品を後払いで仕入れて、翌月に銀行振り込みで支払いを行い、振込手数料がかかった仕訳です。
原則、仕入れにかかる諸費用は、仕入れの勘定科目に含めます。
商品納品時には、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に買掛金の勘定科目です。
この時には、振り込み手数料などの金額は未定なので、商品本体の代金だけ仕訳します。
代金支払い時には、左の借方に買掛金と仕入の勘定科目、右の貸方に普通預金の勘定科目です。
代金を振り込む時にかかる振り込み手数料200円を、仕入れにかかる諸費用として、仕入の勘定科目に追加しています。
ただ、この仕訳をすると、商品を仕入れた時点から遅れて、200円分の仕入の勘定科目が追加されることになります。
これって分かりにくいですよね。
こんな場合には、少額な諸費用の特例を使うこともできます。
少額な諸費用の特例を使うと、仕訳はこうなります。
・商品を受け取った時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 30,000 |
買掛金 30,000 |
・翌月に代金を支払った時の仕訳
借方 |
貸方 |
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買掛金 30,000 |
30,200 普通預金 |
振込手数料を雑費で会計処理しています。
雑費じゃなくても、「支払手数料」の勘定科目を追加していれば、それで構いません。
これは仕入れにかかる諸費用の中でも、少額なものにだけ許される特例です。
本来は運搬費や手数料は全て仕入れ費用に含むのが原則です。
仕入れにかかる少額な諸費用の特例
仕入れには、購入代金の他に諸費用も含め、全ての費用の額が含まれるのが原則です。
そのほうが、その年に売れ残りがあった場合に、税金が高くなるからです。
逆に言えば、諸費用を仕入れに含めないと、売れ残りがあった時に税金が安くなる、つまり脱税と見られる可能性があります。
しかし、国税庁の通達には、その特例があります。
「購入した棚卸資産の取得価額(5-1-1)これらの費用の額の合計額が少額(当該棚卸資産の購入の代価のおおむね3%以内の金額)である場合には、その取得価額に算入しないことができるものとする。」
これは、商品本体の仕入れ額の、3%程度の諸費用であれば、まぁ見逃してあげるよってことです。
仕訳の具体例9
商品を仕入れて、代金3万円を、事業用のクレジットカードで支払い、翌月に銀行口座から引き落とされた。
・商品を受け取った時の仕訳
借方 |
貸方 |
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仕入 30,000 |
買掛金 30,000 |
・翌月に銀行口座から引き落とされた時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
買掛金 30,000 |
普通預金 30,000 |
商品を受け取った時
・費用の部、仕入が増える。
・負債の部、買掛金が増える。
代金を引き落とし時
・負債の部、買掛金が減る。
・資本の部、普通預金が減る。
事業用のクレジットカードでの支払いは、後払いとして会計処理します。
通常の後払いと全く同じ会計処理で大丈夫です。
商品納品時は、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に買掛金の勘定科目です。
代金の銀行口座引き落とし時には、左の借方に買掛金の勘定科目、右の貸方に普通預金の勘定科目です。
仕訳の具体例10
商品を仕入れて、代金3万円をプラーベート用のクレジットカードで支払い、翌月にプラーベート用の銀行口座から引き落とされた。
・商品を受け取った時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 30,000 |
事業主借 30,000 |
・翌月に銀行口座から引き落とされた時の仕訳
帳簿の仕訳なし
商品を受け取った時
・費用の部、仕入が増える。
・資本の部、事業主借が増える。
プライベートのクレジットカードで支払った時は、事業主のポケットマネーでの支払いと同じ会計処理をします。
クレジットカードでは、銀行口座引き落としが後日になりますが、事業用の口座でなければ、帳簿とは無関係なので、引き落とし時の仕訳は不要です。
商品納品時は、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に事業主借の勘定科目です。
代金の銀行口座引き落とし時には、事業と無関係の口座なら仕訳はなしです。
先払いで商品を仕入たときの仕訳
前金で支払って仕入れた時の仕訳です。
仕訳の具体例11
仕入れ商品を注文して、手付金1万円を事業用の現金で支払い、翌月に仕入れ商品を受け取り、代金の残り2万円を、事業用の現金で支払った。
・商品を注文した時の仕訳
借方 |
貸方 |
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前払金 10,000 |
現金 10,000 |
・翌月に商品を受け取った時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 30,000 |
現金 20,000 |
商品を注文した時
・資産の部、前払金が増える。
・資産の部、現金が減る。
商品を受け取った時
・費用の部、仕入が増える。
・資産の部、現金が減る。
・資産の部、前払金が減る。
商品を仕入れるときに、事前に手付金を支払った時の仕訳です。
仕入れる商品を注文する時に、内金や手付金と言われるお金を仕入先に前払いして、その後に商品を受け取ります。
仕入として費用が発生するのは、実際に商品を受け取って、仕入れた時点です。
商品を注文した時には、左の借方に前払金の勘定科目、右の貸方に現金の勘定科目です。
この1回目の仕訳では、現金から前払金に勘定科目を変更しただけで、まだ仕入として会計処理されず、仕入れの費用は発生しません。
商品を実際に仕入れた時には、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に現金と前払金の勘定科目です。
この2回目の仕訳の時点で、仕入として費用が発生しています。
前払金の勘定科目
内金、前金、手付金、申込金、予約料金など、あらかじめ商品を受け取る前に、代金の一部や全部を支払うことがあります。
その時に使う勘定科目が、「前払金」の勘定科目です。
前払金は、青色申告決算書の資産の部の勘定科目です。
前渡金とも呼ばれますが、青色申告決算書では、前払金という名称を使います。
仕訳の具体例12
仕入れ商品を注文して、全額5万円を前金で、事業用の銀行口座から振り込み、振込手数料が200円かかり、翌月に仕入れ商品が届いた。
・商品を注文した時の仕訳
借方 |
貸方 |
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前払金 50,200 |
普通預金 50,200 |
・翌月に商品が届いた時の仕訳
借方 |
貸方 |
---|---|
仕入 50,200 |
前払金 50,200 |
商品を注文した時
・資産の部、前払金が増える。
・資産の部、普通預金が減る。
商品を受け取った時
・費用の部、仕入が増える。
・資産の部、前払金が減る。
前払いで全額を銀行振込で支払って商品を仕入れ、振込手数料も負担した時の仕訳です。
仕入れの場合は、振込手数料などの諸費用は仕入の価格に含みます。
商品を注文した時には、左の借方に前払金の勘定科目、右の貸方に普通預金の勘定科目です。
金額は、商品代金と振込手数料の総額です。
この時点では、仕入の費用はまだ計上されていません。
商品が届いた時には、左の借方に仕入の勘定科目、右の貸方に前払金の勘定科目です。
この時点で、仕入として、費用に計上されます。
会計処理や帳簿は、アプリを使いながら覚えましょう。
いろいろ悩むより、会計アプリを無料で試してみましょう。
会計処理は、難しくて面倒に感じますが、自分で実際に帳簿を作ってみるのが、一番早く覚える方法です。
会計アプリを使えば、誰でも簡単に帳簿が作れますよ。
これで私は青色申告しています。
たくさん税金払うの好きですか?