廃棄して固定資産を除却、個人事業主の会計処理です。
固定資産を廃棄した時の、仕訳と台帳処理
固定資産廃棄の帳簿の仕訳、会計処理を具体例で説明します。
事業で使っている固定資産を廃棄処分にする時には、仕訳して帳簿に記録する必要があります。
また、固定資産台帳からの削除も必要です。
業務内容の見直しなどで不要になった固定資産や、壊れて使えなくなった固定資産など、これらの不要資産を持ち続けると、固定資産税などの無駄な費用がかかります。
不要資産は廃棄処分して帳簿もスッキリ整理しましょう。
ただ、帳簿から削除できるのは、廃棄処分した資産や、保管しているけど将来的に絶対に使わない資産です。
保管している一時的に使わないだけの資産は、帳簿から削除できません。
ここでは、固定資産を廃棄処分にする具体例を紹介しますが、廃棄処分と、売却するのでは、仕訳が違います。
売却する場合の仕訳は、「個人の複式簿記、固定資産の売却の仕訳」を見てください。
固定資産を廃棄する時の勘定科目
廃棄では、「雑費」の勘定科目を使います。
ほとんどの個人事業主では、固定資産を廃棄処分するのは、そんなに多くありません。
その場合は、青色申告決算書にある「雑費」の勘定科目を使いましょう。
廃棄処分の損失金額が少ない場合は、雑費の会計処理で十分です。
ただ、固定資産の廃棄が多い場合や、高額な固定資産を廃棄する時は、「固定資産除却損」という勘定科目を使います。
この固定資産除却損は、法人では良く使う勘定科目ですが、青色申告決算書には用意されていません。
また、個人事業主の会計アプリにも、あまり登録されていないので、自分で勘定科目を追加します。
会計アプリでは、補助科目の設定ができるので、「雑費(除却損)」という設定が手間がかからずおすすめです。
ここでの具体例では、雑費(除却損)の勘定科目を使います。
個人事業主は、除却損が認められるのか?
個人事業主でも、除却損の会計処理が、法令で認められています。
個人事業主には、固定資産の廃棄による除却損の会計処理が、認められないと誤解がよくあります。
しかし、所得税法の第51条で、事業用固定資産の、資産損失の必要経費算入が認められています。
また、所得税基本通達にも、法第51条資産損失の必要経費算入関係の通達があります。
ご心配なく。
<参考>国税庁HP、法令解釈通達
所得税基本通達・固定資産等の損失
法第51条《資産損失の必要経費算入》関係
これで私は青色申告しています。
定額法の資産を償却前に廃棄処分
複式簿記の仕訳の具体例です。
仕訳の具体例
約2年前に12万円で購入した定額法で減価償却するパソコンが、今年の6月に壊れて廃棄処分。
この時の仕訳と、固定資産台帳から削除する具体例を紹介します。
固定資産台帳への登録内容
- 勘定科目、工具器具備品
- 減価償却資産の名称、パソコン
- 面積または数量、1台
- 取得年月、2年前の5月
- 取得価額、120,000円
- 償却の基礎になる金額、120,000円
- 償却方法、定額法
- 耐用年数、4年
- 事業専用割合、90%
これまでの家事按分前の減価償却費の累計
- 2年前の減価償却費は、20,000円(8ヶ月分)
- 昨年の減価償却費は、30,000円(12ヶ月分)
昨年末の時点での、このパソコンの減価償却費の累計は5万円で、未償却残高は7万円です。
帳簿の残存価格7万円のうち、事業割合の90%が除却損として、事業の経費にできます。
残りの、家事使用分10%は、事業主貸の勘定科目で会計処理します。
左の借方には雑費(除却損)と事業主貸の勘定科目、右の貸方には工具器具備品の勘定科目です。
借方 |
貸方 |
---|---|
雑費(除却損) 63,000 |
工具器具備品 70,000 |
今年の6月までは使用していたので、1月から6月までの減価償却費を計上する仕訳方法もあります。
左の借方に、減価償却費を加え、3つの勘定科目を使います。
この仕訳方法で、廃棄した6月までの減価償却費を計上しても、事業の経費になるのは、結局は、総計で63,000円となります。
6月までの減価償却費を計上する仕訳方法です。
借方 |
貸方 |
---|---|
雑費(除却損) 49,500 |
工具器具備品 70,000 |
今年分の減価償却費を計上しても、しなくても、経費になる金額は変わらないので、どちらの仕訳方法でも同じです。
固定資産台帳からの削除
忘れずに台帳から削除しましょう。
固定資産を廃棄処分にしたら、固定資産台帳からも削除します。
帳簿の仕訳だけして、台帳からの削除を忘れると、残存価格で固定資産税の課税対象になるので注意しましょう。
減価償却が終わった固定資産を廃棄処分
償却が終了した資産を削除する、複式簿記の仕訳の具体例です。
仕訳の具体例
約6年前に12万円で購入した定額法のパソコンが、今年の6月に壊れて廃棄処分。
この時の仕訳と、固定資産台帳から削除する具体例を紹介します。
この具体例のパソコンは、取得価額は12万円ですが、6年前に購入し、定額法4年で減価償却が終わり、現在の帳簿の残存価額は、備忘価格の1円です。
このパソコンを廃棄処分した時の仕訳です。
借方 |
貸方 |
---|---|
雑費(除却損) 1 |
工具器具備品 1 |
帳簿の残存価格が「1円」なので、「1円」分の工具器具備品の会計処理をします。
左の借方には雑費(除却損)の勘定科目、右の貸方には工具器具備品の勘定科目です。
仕訳が終わったら、固定資産台帳からも忘れずに削除しましょう。
一括償却資産を廃棄処分
購入費20万円未満の固定資産の特例
20万円未満の特例で3ヶ年償却する一括償却資産、途中削除はできません。
仕訳の具体例、償却前に廃棄処分
昨年に12万円で購入した一括償却資産のパソコンを、今年の6月に廃棄処分しました。この時の仕訳と、固定資産台帳から削除する具体例を紹介します。
一括償却資産は3カ年で減価償却しますが、たとえ、途中で廃棄処分にしても、3年間の減価償却は変えることができません。
一括償却の場合は、1年で廃棄しても、固定資産からは削除できず、3年間で減価償却することになるのです。
現時点では、仕訳はできません。固定資産台帳からも削除できません。
3年経過すると、取得価額の全額が減価償却できるので、残存価額は0円です。
そのため、帳簿の資産からは自動的になくなっているので、仕訳は不要です。
固定資産台帳からは、忘れずに削除しておきましょう。
3ヶ年の償却終了時点で、帳簿の仕訳は不要。固定資産台帳から削除するだけでOKです。
仕訳の具体例、3ヶ年償却終了後に廃棄処分
3ヶ年償却終了後に廃棄、仕訳は不要で、固定資産台帳から削除するだけでOKです。
4年前に12万円で購入した一括償却資産のパソコンを、今年の6月に廃棄処分しました。
この時の仕訳と、固定資産台帳から削除する具体例を紹介します。
すでに3年が経過しているので、帳簿の残存価額は0円になっています。
定額法の固定資産は、減価償却終了後に備忘価額1円になりますが、3ヶ年で償却する一括償却資産は、備忘価額がないため、帳簿の資産は0円になっています。
そのため、帳簿資産から削除する仕訳は不要です。
固定資産台帳からは、忘れずに削除しておきましょう。
即時償却資産を廃棄処分
購入費30万円未満の固定資産の特例
仕訳は不要で、固定資産台帳から削除するだけでOKです。
仕訳の具体例、即時償却資産を売却する場合
昨年に25万円で購入した即時償却資産のパソコンを、今年の6月に壊れて廃棄処分。
この時の仕訳と、固定資産台帳から削除する具体例を紹介します。
少額減価償却資産の特例で、即時償却をしているので、取得価額の全額の減価償却が終わっています。
即時償却の場合は、備忘価額1円はないので、現在の帳簿価額は0円です。
そのため、帳簿資産から削除する仕訳は不要です。
固定資産台帳からは、忘れずに削除しておきましょう。
売却より廃棄が得なのか?
安値の売却は、事業の経費にできないので損することに。
帳簿価額より安い値段での、固定資産売却の会計処理では、譲渡所得として個人事業主のプライベートでの損失になります。
この損失に相当する金額は、償却前に売却しなければ、本来なら減価償却費として、事業の経費にできる金額です。
せっかくの事業の経費にできる金額を、売却することで無駄にしていることになります。
償却前の固定資産を、売却ではなく廃棄処分にすれば、帳簿の残存価額が、全額事業の必要経費にできます。
ただし、償却前の廃棄処分は、その証拠となる書類を揃える必要があります。
ここでは、固定資産を廃棄処分にする具体例を紹介しましたが、廃棄処分と、売却するのでは、仕訳が違います。
売却する場合の仕訳は、「個人の複式簿記、固定資産の売却の仕訳」を見てください。
売却と廃棄、こんな裏技は、脱税行為です。
脱税はダメ。きちんと会計処理して、堂々と節税しましょう。
裏技的に、廃棄処分して残存価格を前倒しで必要経費にするのは、脱税行為です。
本当は売却しているのに、帳簿上は廃棄で会計処理する、これはかなり悪質な脱税行為です。
税務署の調査で見つかると、厳しくペナルティがあるので、やめておきましょう。
当たり前ですが、売却したら売却で会計処理、廃棄したら廃棄で会計処理しましょうね。
会計処理や帳簿は、アプリを使いながら覚えましょう。
固定資産の会計処理は、難しくて面倒に感じますが、自分で帳簿を作ってみるのが、一番早く覚える方法です。
会計アプリを使えば、誰でも簡単に帳簿が作れます。
いろいろ悩むより、会計アプリを無料で試してみましょう。
これで私は青色申告しています。
たくさん税金払うの好きですか?